ペンと剣は戦わない

生きていくために俺はあと何を犠牲にすればいい?

 三年間付き合っていた彼女が死んだ。自殺だった。

 自殺なんてする予兆は全くなかったし、事実昨日LINEでしゃべった時も元気そうだった。けれども現象として確実に彼女は死んだ。自らの意志によって。

 だから、最初にその知らせを聞いたときはその事実を信じることが今一つできなかった。いまひとつ事実を事実として正しく受け止めることができなかった、というほうが正しいのだろうか。ふわふわした気持ちのまま、あわただしく葬儀や法要を済ませて気が付いたら数か月が経っていた。

 そこでようやく彼女がもういない、という実感がわいてきて、心の中にぽっかり空いた穴に気付いた。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」なんて言葉があるけれど、確かに穴を覗いてみるとそこには死霊と化した彼女が怖い顔をしてこちらをの覗き見ていた。結局君は何で死んでしまったのか、最後まで僕にはわからないままだった、ということに気付くのはもうだいぶあとになってからだった。

 彼女はいま、僕の心を食べている。そういうふうにして僕の心に生まれた穴はだんだんと大きくなっていき、最終的に僕の心のすべてを食べつくしていくのだろう。そういう風にして、開いて広がっていく穴を埋めることができるものは結局何であるのか、という問いに対する答えは結局見つからないままだ。

 

 

 

その答えを見つけに彼女のところへ行ってきます。さよなら。