ペンと剣は戦わない

生きていくために俺はあと何を犠牲にすればいい?

地下

 新入生の連中がそろそろ自分で作った時間割に後悔して死んだ目で通いだすころ、僕の死んだ目にはようやくうっすらとハイライトが入るようになる。そういえば自殺するのも1年の中でこの時期が最も多いらしい。

 結局人間を殺すのは暑さでも寒さでもなく人間自身なのさ、と呟きながら僕は図書館の地下に潜る。コンクリートむき出しの地下の空間は調子がいい時は僕を護る要塞になるし、調子が悪いときは牢獄になる。この空間には、大量の本と歴史がある。僕はそこに籠って、ひたすら調べ物をする。正直地下から本を持ち出せばいいだけの話なのだけれど、喧騒を嫌う僕は結局くらい地下に籠り続ける。

過去にも未来にも意味はない、今を生きることが正しい、とは思う。今を乗り切らないと未来は与えられないし、後ろを向いていたら今は乗り切れないから。ただそれでも、過去は未来よりは有意義だと思う。未来は何も役に立たないが、過去を知ることで今を乗り切れることは数多くあるから。

 

今を生きることをあきらめた僕はこうして人の世界を離れて、過去に留まることを選択した。さぁ、いつまで時間という概念を排除できるかな。

 

今日も僕は地下に潜る。そこに何の意味があるかはわからないけど。